枯葉舞う駅前の20:00
前回の続きです。B君、まだしつこく聞きます。
「だからA子さん、給料いくらもらってるんですか?」
「言えないも~ん」
「じゃ、わかりました、いっしょに言いましょう。せーの!」
ふたりは「19万(モゴモゴ)……」と声を合わせます。
とたんに冷めるB君。
「まじですか……A子さんくらい長く勤めてるのに、ボクとそんなに変わらないなんて、ちょっとショックですね」
「そんなもんだよお~」
A子、まだ甘い口調をくずしません。
ふたたび帰りたそうなそぶりを見せてB君がそわそわしてもとりあわず、そのまま自分のペースにもっていきます。
「××さん、さびしがると思うよ~」
「ああ……今日も会社に帰ってくると思って待ってたんですけど、直帰だったみたいですね」
「さびしがると思うよ~、B君のこと、あれだけかわいがってたのに」
「そうですね……そのうち、挨拶しなくちゃいけないですね」
「さびしがると思うよ~」
A子の横顔はどんどん翳ります。とうとうB君、はっきり切り出します。
「あ、そろそろ行かなきゃ、すいません!」
「ああ、わかった……私も出る」
A子、B君があわてて店を出るその背中に、キケンな声をかけました。
「私は今日はいいんだけどなぁ~、ダンナも遅いからひとりなんだ~」
「あ、そうなんすか~」
軽く受け流すA君。枯葉舞う駅前のドトールはもうすぐ20:00……。